- 1.分解能(Resolution)に関して
- ① 分解能とは、入力信号の電圧レベル方向の細かさを決めるものです。
- ② 一般的に8bit, 12bit, 14bit, 16bit, 18bit, 20bit, 24bitなどがあります。
③ 8bitで分解した場合は28=256となり、256段階に分解することができます。
④ 例えば、1Vp-pの入力信号を8bitフルスケールで分解すると測定できる最小レベルは1÷256=0.0039V (3.9mV)となります。
⑤ 16bitの場合は216=65,536となり、65,536段階に分解することができます。 - ⑥ 同様に、1Vp-pを16bitフルスケールで分解すると1÷65,536=0.000015 (0.015mV)となりきめ細かな測定が可能になります。
- ⑦ 分解能が高くなるほどサンプリングレートは低くなりますので、分解能とサンプリングレートはトレードオフの関係があります。
- 2.サンプリングレート(Sampling Rate)とは
- ① サンプリングレートは、時間軸方向の細かさを決めるものです。
- ② 一般的に数十KHz~数GHzのサンプリングクロックを使用し、高速になるほど分解能(bit数)は低くなります。
- ③ 例えば、1MHzでサンプリングした場合は1÷1,000,000=0.000001となり、サンプリング間隔は1µsとなります。
- ④ 1GHzでサンプリングすると、1÷1,000,000,000=0.000000001となり、サンプリング間隔は1nsときめ細かな測定が可能になります。
- ⑤ 但し、高速にサンプリングする場合はデータレートが高速になり、後処理の負荷が大きくなりますので検討が必要です。
- ⑥ ナイキストの定理より、サンプリング周波数の1/2未満が取得帯域幅となることから1GHzでサンプリングした場合の帯域幅は500MHz未満となります。
- ⑦ 必要な帯域幅の最低2倍を超えるサンプリングレートを選択することで信号を取得することができますが、できるだけ高いサンプリングレートを使用した方が信号の再現性が良くなります。
- 3.入力レンジ
- ① 入力レンジは、アナログ信号を入力する電圧レベルの範囲を決めるものです。
- ② ユニポーラ(0~+5Vなど)又はバイポーラ(-5V~+5Vなど)がありますので入力する信号に合わせます。
- ③ 入力レンジはメーカによって様々です。可変できるものもあれば固定のタイプもありますのでデータシートで予め確認します。
- ④ 入力信号は入力レンジを超えない(サチらない)ようにできる限り下限から上限まで(フルスケール)を使用することで良好な信号を取得することができます。
- 4.マルチプレクサ方式
- ① 高速なA/Dボードの場合は専用のA/Dコンバータを使用して複数チャンネルを同時サンプリングしますが、低速・低価格のA/Dボードの場合、1つのA/Dコンバータを使用して複数チャンネルの信号を順番にサンプリングするものがあります。これをマルチプレクサ方式と言い、チャンネル間の同期が求められない用途に使用します。
- ② マルチプレクサ方式は、1つのA/Dコンバータを複数チャンネルで共有する為最も低価格となります。
- ③ 温度・湿度の測定など変化の少ない測定用途で利用します。
- 5.フォームファクタ
- ① フォームファクタはA/Dボードの形状の事ですが、PCE Express, PXI Express, Compact PCI, PMC/XMC, VME, VPX, MTCA, USBボックスなどがあります。
- ② 最も一般的なのはPCI ExpressでWindowsパソコンの拡張スロットにインストールして利用することができます。但し、ロングカードの場合は小型のパソコンに入らない場合もありますので注意が必要です。
- ③ USBボックスタイプは、USB接続でノートPCに接続して簡単に利用することができます。但し、USBの転送レートに制限されます。
- ④ 耐環境性が必要な場合は、PMC/XMC, VME, VPXなどのMILスペックをサポートしたものを使用します。
- 6.FPGAの必要性
- ① A/DボードにはFPGAを搭載したタイプのものもあります。これはリアルタイムの信号処理(フィルタ、ダウンコンバータ、FFT、復調処理など)が必要な用途に利用され、FPGAロジックをユーザ自身が作成し実装することができます。
- ② ボード上のFPGAで信号処理を実施することで、後段のCPUの処理負荷が軽減されます。
- ③ FPGAを搭載したタイプは高価になりますので、リアルタイム処理が必要ない場合はFPGAが搭載されていないタイプを選びます。
- ④ FPGAにユーザロジックを実装する場合は、予め実装するロジック規模を見積もっておく必要があります。
- 7.GPGPUによる信号処理
- ① FPGAほどのリアルタイム性は必要ないけど、処理ボリュームが大きな場合(画像処理など)はGPUを利用することができます。
② GPGPUを使用することでCPUの処理負荷を軽減することができます。 - ③ A/DボードからGPGPUにダイレクトにデータ転送できるドライバを提供しているメーカもありますので詳細はお問い合わせください。
- 8.複数ボードの同期
- ① 複数ボードを同期させてチャンネル数を拡張する場合は、共通のクロック及びトリガーを使用します。メーカによりその手法は異なりますので詳細はお問い合わせください。
- ② Spectrum社では、StarHubというボード間同期用の増設モジュールをオプションで用意しています。これにより最大16枚のA/Dボードを同期することができます。
- 9.動作温度範囲について
- ① PCI Expressのタイプの場合、屋内環境のパソコンにインストールして使用することから0-50℃が一般的です。
- ② 0℃以下や50℃以上の温度拡張が必要な場合は、VME又はVPXなどの組込みタイプのものを選びます。VMEやVPXは航空機や艦船などの搭載を目的に設計されていますのでより過酷な環境で利用することができます。