はじめに:
無人航空機(UAV)のインテリジェンス、監視、偵察(ISR)アプリケーションに供給する組み込みコンピューティングシステムの需要の高まりにより、高性能と柔軟性を兼ね備えた再構成可能なCOTS(市販)ハードウェアプラットフォームの迅速な開発と配備の必要性が高まっています。これらのソリューションにより、アプリケーション固有の製品カスタマイズが可能になり、デザインフローの自動化が向上します。これにより、信号処理エンジニアはFPGAの並列処理機能を活用して、プラットフォームのパフォーマンスを向上しコストメリットを改善することができます。
FPGAベースのシステム:
柔軟なFPGAベースのシステムは、汎用プロセッサ(GPP)のみに基づく他のタイプのシステムと比較して、ISRアプリケーションの計算密度を高めながら、UAV機体により適した、より小さなサイズ、重量、および電力(SWaP)プロファイルも可能にします。広帯域信号の取得や分析などの信号インテリジェンス(SIGINT)タスクは、高性能で低遅延のFPGAベースのアプローチを使用して無人航空機で実行されるようになりました。以前は、電力消費が大きくUAVのSWaP制限を超えていたため、このような機能は地上で実行されていました。
パフォーマンスとSWaP効率の大幅な向上は、ザイリンクスのUltraScaleファミリを含む最新世代のFPGAによって実現されています。これにより、ワットあたりの処理パフォーマンスが大幅に向上し、コンピューティングを多用するISRアプリケーション向けのより小型で電力効率の高いプラットフォーム設計が可能になります。
空中アプリケーションでは、ハイエンドFPGAはセンサーとのインターフェイスや大量のデータの移動に特に役立ちます。また、FPGAにいくつかのI/Oピンとロジックを割り当ててレガシーI/Oプロトコルを変換することにより、レガシーI/Oデバイスとのインターフェイスに使用することもできます。
FPGAの可用性:
CPUやGPUなどの汎用デバイスよりも高い計算効率の恩恵を受け、アプリケーション固有のアルゴリズムをプログラムできるため、FPGAをベースにした再構成可能なハードウェアはUAVペイロードの迅速な展開に不可欠です。モジュラーシステムはまた、スケーラビリティを向上させ、コードの再利用の機会を増やします。モジュール式のソフトウェア設計により、実績のあるIPを複数のISRアプリケーションに再利用でき、モジュール式のハードウェア構成により、ISRアプリケーションの拡張が容易になり、ミッションの要件とUAV機体のSWaPプロファイルをより適切に満たすことができます。これらの特性は、開発サイクルを短縮することでUAVアプリケーションの配備をスピードアップし、コストをさらに削減しフィールド障害の数を最小限に抑えることでシステムの信頼性を向上させるのに役立ちます。
センサー用FPGA:
UAVは現在、幅広い防衛作戦のための詳細なデータの配信において重要な役割を果たしています。UAVプラットフォームでのより優れた信号処理機能の必要性は、UAVが引き受けるISRおよびSIGINTの任務の急速な進化と拡大、および高度なアンテナや電気光学(EO)を含むオンボードセンサーおよび赤外線(IR)対応カメラの感度の向上の結果です。したがって、これらのセンサーによって収集されるデータ量の大幅な増加に対処する必要のある組み込みセンサー処理サブシステムは、低電力で効率的なFPGAによって提供される並列コンピューティングリソースと、小型パッケージ化されたFPGAメザニンカード(FMC–VITA 57.1/57.4)などの最新ADCの機能の両方を活用することが不可欠です。
FPGAは、高性能・広帯域またはGHz対応のアナログ-デジタルコンバータ(ADC)と組み合わせることでセンサーからのアナログ信号をデジタル化し、取得したビットストリームを処理するために不可欠です。FPGAによって実行されるセンサー処理機能は、いくつかの一般的なカテゴリに分類できます。SIGINTアプリケーションの場合、時間領域での狭帯域抽出にはデジタルダウンコンバータが使用され、周波数領域ではデータの削減と高速フーリエ変換(FFT)演算による調整が使用されます。レーダーアプリケーションはパルス圧縮とイコライゼーションに依存しており、EO/IRアプリケーションはFPGAが実行できる非常に効率的な画像圧縮の恩恵を受けています。
- デジタルダウンコンバージョンは、帯域制限されデジタル化した信号を高いサンプルレートから低い周波数にミキシングし、ターゲットデータ情報を保持しながらサンプルレートを下げます。これにより、より広いスペクトルウィンドウから忠実度の高い狭帯域信号をデジタル抽出することができます。デジタルダウンコンバージョンにFPGAを使用する主な利点は、構成可能なロジックブロックのリアルタイム並列処理速度です。また、FPGAはフィルターの特性を変更したり、係数を再構成したりする必要がある場合に、デジタルダウンコンバージョンを実装する際に開発者に大きな柔軟性を提供します。
- データの削減とチューニングは、FPGAが提供する並列処理と柔軟なプログラミングの恩恵も受けます。FFT動作のパフォーマンスは、周波数ビニングを実行する際のFPGA内の専用DSPロジックによって大幅に向上します。ザイリンクスフのUltraScale FPGAはフィルタリングとFFTアルゴリズムの両方の中心となるロジックが特徴です。
- FPGAは、通常レーダ信号のパルス圧縮を可能にする一連の3つの演算(FFT、虚数乗、逆FFT)の実装にも理想的です。FPGAの並列処理を使用して、レーダシステムのアンテナアレイから取得した信号にイコライゼーションを効率的に適用できます。アレイの各素子は、FPGAへの広帯域幅リンクを備えたDSPに個別の入力チャネルを供給します。
- EO/IRアプリケーションのセンサーからFPGAへのデータストリームは、生成されるデジタル画像のサイズが原因で、データ管理およびストレージリソースに負荷をかける可能性があります。したがって、効率的な画像圧縮またはデータ削減が必要であり、FPGAはこの目的で一般的に使用されるアルゴリズムに適しています。
ISR用のFPGAベースシステムの配備:
FPGAによって実行される低レベルの処理タスクは、さまざまなアプリケーションやシステムで類似していますが、センサーのタイプ、I/Oオプション、およびプラットフォームの制約などからFPGAをさまざまな方法で構成する必要があります。
例えば、アンテナからの受信データがFPGAモジュールに到達したときにまだアナログ形式である場合、シグナルインテグリティとパフォーマンスの観点から、ADCコンポーネントを広帯域幅接続でFPGAの近くに配置することを提案します。その他のシナリオでは、ADCをアンテナの近くに配置する必要がある場合、またはセンサーのデジタル化されたデータストリームをFPGAに直接接続する必要があるEO/IRアプリケーションなどではFPGAモジュールへの入力は予めデジタル化されています。
プラットフォームのサイズも重要な考慮事項です。船舶や航空機などの大規模なプラットフォームアプリケーションには、センサーによって収集されたデータを処理するための大規模で非常に強力な6Uシステムを装備することができます。Predatorなどの一部のUAVプラットフォームも、6Uシステムをサポートするのに十分な大きさですが、ほとんどのUAVは小型であるためコンパクトな3Uシステム、特にOpenVPX(VITA 65)に基づくシステムに適しています。3Uフォームファクタは元々UAVで主にミッションコンピュータとそれほど集約的でないISRおよびSIGINTアプリケーションに使用されていましたが、3Uボードの計算能力が向上するにつれて変化しました。もちろん、これにより熱密度が上昇し冷却の管理と適応型電力削減技術の開発が非常に重要になりました。
FPGAベースのソリューションを設計するための他のオプションもありますが、OpenVPXで可能な相互運用性、高帯域幅容量、および高耐久性レベルにより、防衛産業ではこの規格が広く採用されています。
ISR向けAbacoソリューション:
空中ISR処理アプリケーションのニーズに対応するため、高度なFPGAを実装する方法はいくつかあります。Abacoの VP889などの3U VPXフォームファクタの柔軟なFPGAベースのアーキテクチャは、FMCモジュール上の最新の広帯域ADCおよび高速で高分解能のDACと組み合わせることができます。
必要に応じてAbacoの豊富な製品群からFMCを選択することで、データを信号処理しながら空冷または伝導冷却構成のいずれかで低遅延信号処理の両方を処理する超高速デジタルトランシーバを構築することができます。このようなモジュール構成は、新しいテクノロジーが利用可能になったときに簡単にアップグレードができるため、高レベルの柔軟性を提供します。
これらのスモールフォームファクタシステムがUAVにさらに適したものになるには、新しい3U VPXバックプレーントポロジが必要です。これは、今日の3U設計の多くが最先端のFPGAによって提供される高帯域幅を十分に活用できないためです。中小規模のUAV機体固有の厳しいサイズ制限を考えると、これらのサブシステムがコンパクトな環境に適応できることも非常に重要です。Abacoは、2つおよび3つのスロット3U VPX準拠のバックプレーンを相互接続する機能を提供するVPXバックプレーンのFlexVPX製品でこれらの課題に対処しました。
これにより、COTSハードウェアを使用してより高度なカスタマイズが可能になり、UAVの組み込みコンピューティング設計に新しいオプションが開かれます。大規模な研究所と共同で開発されたFlexVPXは、マルチポートPCI Expressブリッジを使用して高速データパスを維持する小さなボードに大きなバックプレーンフォーマットを細分化し、システム内の異なる要素間のポイントツーポイント通信の高スループットを確保することでSWaPの懸念に対処します。高速ケーブルはバックプレーンの背面に直接接続され、数十ギガビットのスループットでバックプレーン間通信を可能にします。このように、FlexVPXバックプレーンはほとんどのUAVに見られるような非常に限られた物理的空間内にミッションクリティカルな組み込みコンピューティング機能を展開するために使用できるモジュラーフォームファクターで、従来のバックプレーンの機能を提供します。
まとめ:
コグニティブ処理とより多くの帯域幅の絶え間ない必要性は、レーダーとEW処理サブシステムのパフォーマンス要件を大幅に押し上げていますが、サイズ、重量、および電力の可用性は低下しています。
これらの要件は、マルチコアプロセッサ、GPU、ザイリンクスのRFSoCおよびZynq MPSoC FPGAなどの高度なテクノロジを使用することで正常に対処できるため、開発者は適切な認知およびデジタル処理アルゴリズムのレーダープロトタイピングに集中できます。
次世代のコグニティブレーダーおよびEWシステムの場合、VP431および同様の製品は、エンドツーエンドの遅延とシステムパフォーマンスにおいて、敵に対して必要な優位性を提供できます。
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原文ドキュメント:Abaco Systems社
leveraging_fpgas_for_evolving_isr_application_requirements_0.pdf
Leveraging FPGAs for Evolving ISR Application Requirements
関連製品
VP831:SOSA準拠 Virtex UltraScale+ / Zynq UltraScale+ FPGAキャリアボード (VPX)
VP889:FMC+対応 Virtex UltraScale FPGAキャリアボード (VPX)
Abaco Systems社について
Abaco Systems社は、30年以上前の英国Plessey Microsystems社がルーツとなる企業です。Plessey社はICS社とOctec社を買収してRadstone社となりました。2006年にRadstone社は、SBS社、VMIC社、Condor社などの組み込みコンピューティング企業を買収したGE Fanuc Embedded Systems社に買収されました。2015年にEmbedded Computing部門がVeritas Capital社に買収され、Abaco Systems社が誕生しました。更にAbaco Systems社は4DSP社を買収し、FPGAボードやAD/DA FMCモジュールのラインナップを拡充して組み込みシステムビジネスのリーダーとしてマーケットを牽引しています。Abaco Systems社の詳細については、www.abaco.comを参照してください。